「災害が起きたらどうする?」という話を、家族でちゃんとしたことはありますか?私も以前は「何となく避難所に行けばいいか」程度に考えていましたが、実際に台風で停電を経験してから、事前に決めておくべきことの多さに気づきました。9月1日の防災の日を前に、家族全員で確認しておきたい3つの重点項目を整理します。この記事では、連絡手段の優先順位・集合場所の決め方・各人の役割分担について、チェックリストとともに具体的な決め方を解説します。
なぜ事前に決めておく必要があるのか
災害発生時、家族全員が自宅にいるとは限りません。結論から言えば、携帯電話が使えない前提で動ける計画を持つことが最も重要です。
大規模災害時には以下の状況が同時に発生します:
- 携帯電話の通信規制(音声通話が30秒〜数分つながらない)
- 基地局の停電や回線混雑によるデータ通信の遅延
- 家族の所在地がバラバラ(学校・職場・外出先)
- 交通機関の停止による帰宅困難
東日本大震災では発生直後の音声通話の接続率が約1%、阪神・淡路大震災でも通話規制が数時間継続しました。「その時LINEで連絡すればいい」という発想は、データ通信も含めてつながらない可能性を考慮していません。事前に決めておけば、通信手段がなくても家族が再会できる確率が大幅に上がります。
連絡手段の優先順位を決める
家族間の連絡手段は「第1手段」から「第4手段」まで複数用意し、優先順位を全員で共有しておくことが重要です。
第1手段:災害用伝言サービス
音声通話がつながらない場合、最も確実なのは災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171)です。
| サービス名 | 利用方法 | メリット | 練習方法 |
|---|---|---|---|
| 災害用伝言ダイヤル(171) | 171→1(録音)または2(再生)→自宅の電話番号 | 携帯電話・固定電話・公衆電話から利用可能 | 毎月1日・15日、防災週間に体験利用可 |
| 災害用伝言板(web171) | https://www.web171.jp にアクセス→電話番号で検索 | スマホのブラウザから文字で伝言を残せる | 同上の体験利用期間に登録・検索の練習 |
| 携帯各社の災害用伝言板 | 各キャリアの災害用伝言板アプリ | 安否情報を自動でSNS連携できる | アプリをインストールして体験モードで練習 |
家族で決めておくこと:
- 伝言を登録する基準電話番号(自宅の固定電話、または家族代表のスマホ番号)を1つに統一する
- 伝言の定型文を決める(例:「家族全員無事。○○小学校に避難中」)
- 毎月1日に171の練習をする習慣をつける(カレンダーにリマインダー設定)
私の家族では、毎月1日の夕食後に171で「今日の晩ごはんメニュー」を伝言する練習をしています。子どもも電話操作に慣れ、電話番号を覚える機会にもなっています。
第2手段:SNSとメッセージアプリ
音声通話よりデータ通信のほうが比較的つながりやすいため、LINE・X(旧Twitter)・FacebookなどのSNSは第2手段として有効です。
ただし注意点として:
- 基地局が停電するとデータ通信も止まる
- 回線混雑で送信に数時間かかる場合がある
- バッテリー消費が激しい(頻繁な更新確認は避ける)
家族で決めておくこと:
- 家族専用のLINEグループを作り、全員が通知をONにしておく
- 「安否確認は1時間に1回まで」など、バッテリー節約のルールを決める
- メッセージが届かない場合は171に切り替える判断基準(例:発災後30分たっても既読がつかない場合)
スマホのバッテリー切れに備えて、モバイルバッテリーやポータブル電源を準備しておくことも重要です。
第3手段:公衆電話と固定電話
携帯電話の通信規制中でも、公衆電話は優先的につながる設計になっています(災害時は無料で利用可能)。
家族で決めておくこと:
- 学校・職場・自宅の最寄りの公衆電話の場所を全員が把握する(Google Mapで「公衆電話」検索)
- 家族の携帯電話番号を紙のメモで全員が持つ(スマホの電源が切れても連絡先がわかる)
- 10円玉を防災ポーチに5〜10枚入れておく(災害時は無料だが、平時の練習用にも)
第4手段:直接会いに行く
すべての通信手段が使えない場合、最終的には事前に決めた集合場所に直接向かうことになります(次のセクションで詳述)。
連絡手段の判断フロー:
- 発災直後:まず171に伝言を残す
- 30分後:LINEで安否確認(既読がつかなければ無理に送り続けない)
- 1時間後:公衆電話または固定電話で連絡を試みる
- 2時間後:通信手段がすべて使えない場合、集合場所に向かう
集合場所を2段階で決める
家族の集合場所は、「一時集合場所」と「最終集合場所」の2段階を決めておくことが鉄則です。
一時集合場所(発災後30分〜2時間)
一時集合場所は、自宅から徒歩5〜10分圏内で、倒壊・火災の危険が少ない屋外空間を選びます。
選び方のポイント:
- 近隣の公園・学校のグラウンド・広い駐車場など
- 周囲に倒れそうな建物・ブロック塀・自動販売機がない
- 火災が起きても延焼リスクが低い(木造密集地は避ける)
- 家族全員が場所を正確に知っている
家族で決めておくこと:
- 候補地を家族で実際に歩いて確認する(「○○公園の東側のベンチ」など、具体的な目印を決める)
- 平日昼間・休日・夜間それぞれで到達にかかる時間を測る
- 一時集合場所に何時間待機するか(目安:2〜3時間。それ以上は最終集合場所へ移動)
私の家族では、自宅から徒歩7分の小学校のグラウンド(校舎から離れた南側)を一時集合場所にしています。休日に実際に歩いて、子どもでも迷わず行けることを確認しました。
最終集合場所(発災後数時間〜数日)
最終集合場所は、自治体指定の広域避難場所または避難所を基本とします。
| 施設の種類 | 役割 | 選び方 |
|---|---|---|
| 広域避難場所 | 大規模火災から身を守る空間(公園・河川敷など) | 火災延焼の危険が高い地域では最優先 |
| 指定避難所 | 自宅に戻れない場合の生活拠点(学校体育館など) | 自宅が損壊・停電で住めない場合に利用 |
| 福祉避難所 | 高齢者・障害者など配慮が必要な方向け | 該当する家族がいる場合は事前に開設条件を確認 |
家族で決めておくこと:
- 自治体の防災マップで最寄りの避難所を確認(市区町村の公式サイトからPDFダウンロード可能)
- 複数の避難所候補を決める(第1候補が満員・損壊の場合に備える)
- 避難所までの複数ルートを歩いて確認(橋・地下道・狭い道は通行不能になる可能性)
- 避難所の開設条件を確認(震度5強以上で自動開設、など自治体により異なる)
マンション住まいの場合、建物自体が無事でも停電でエレベーターが止まり、高層階では在宅避難が困難になることがあります。集合場所の判断基準に「エレベーター復旧の見込み」も加えておきましょう。
「帰宅困難になったら無理に帰らない」ルール
家族が職場・学校にいる時間帯に発災した場合、「むやみに移動を開始しない」ことも重要なルールです。
東日本大震災では約515万人が帰宅困難者となり、道路に人があふれて救助・消火活動に支障が出ました。発災後3時間程度は以下の行動が推奨されています:
- 職場・学校にとどまって安全を確保
- 交通情報・道路状況を確認してから移動判断
- 徒歩帰宅する場合は複数人で、水・食料・地図を持つ
家族で決めておくこと:
- 「発災後○時間は職場・学校で待機」のルール(目安:3時間)
- 徒歩帰宅する場合の目印(コンビニ・ガソリンスタンドなど)と休憩地点
- 帰宅できない場合の連絡方法(171に「職場待機中」と残す)
役割分担を具体的に決める
「誰が何をするか」を事前に決めておくことで、災害時の初動が格段に早くなります。以下、発災直後の10分間にやるべきことを家族で分担します。
発災直後(〜10分)の役割分担例
| 担当者 | 役割 | 具体的な行動 |
|---|---|---|
| 大人1(例:父) | 安全確保・火元確認 | 揺れが収まったらガスの元栓を閉める→ブレーカーを落とす→玄関ドアを開けて避難経路確保 |
| 大人2(例:母) | 家族の安否確認・避難誘導 | 家族全員の無事を確認→ケガ人の応急処置→避難の要否を判断 |
| 子ども(小学生以上) | 防災バッグの運搬 | 玄関または寝室に置いた防災バッグを持ち出す→懐中電灯・靴を準備 |
| 高齢者・要配慮者 | 安全な場所で待機 | テーブルの下など安全な場所で待機→移動時は杖・車いすなど必要なものを確認 |
家族で決めておくこと:
- 誰がどの役割を担うか、平時に話し合って決める(「お父さんがいない時はお母さんが全部やる」など、パターン別も想定)
- 月1回、簡易的な避難訓練をする(例:「地震です」の合図で各自の役割行動を30秒で開始)
- 子どもの成長に合わせて役割を見直す(小学校入学・中学生になったタイミングなど)
避難時の役割分担(自宅→一時集合場所)
避難時は「先導役」「荷物運搬役」「後方確認役」の3役を分担します。
- 先導役:ルートの安全を確認しながら先頭を歩く(障害物・倒壊の危険を早期発見)
- 荷物運搬役:防災バッグ・貴重品を運ぶ(体力のある家族が担当)
- 後方確認役:家族全員がついてきているか確認、遅れている人をサポート
私の家族では、父が先導、中学生の娘が荷物、母が後方確認と決めています。実際に家から公園まで歩いてみて、「階段は一列で」「信号のない交差点では必ず止まる」などの細かいルールも確認しました。
避難所での役割分担
避難所生活が数日続く場合、家族内でも「炊事」「物資受け取り」「情報収集」などの役割を分担すると、ストレスが減ります。
避難所生活で想定される役割:
- 炊事・配膳の手伝い
- トイレ清掃の当番
- 物資配布の列に並ぶ
- 自治体やボランティアからの情報を聞く
- 子どもの見守り・遊び相手
「避難所では家族もバラバラに動く」ことを前提に、各自がどの役割を担えるか事前に話し合っておくと、避難所の運営側とも連携しやすくなります。
家族防災会議のやり方
「何を決めるか」がわかっても、実際に家族全員で話し合う時間を確保するのは難しいものです。ここでは、私が実践している「月1回30分の家族防災会議」の進め方を紹介します。
会議の開催タイミング
おすすめは毎月1日の夕食後です。理由は以下の通り:
- 毎月1日は災害用伝言ダイヤル(171)の体験利用日なので、練習とセットにできる
- 月初めは予定が立てやすく、習慣化しやすい
- 夕食後はリラックスしていて、子どもも参加しやすい
会議のアジェンダ(30分構成)
- 前回の宿題確認(5分):前月に決めた「やること」(防災グッズの補充など)ができたか確認
- 今月のテーマ(15分):連絡手段・集合場所・役割分担のいずれか1つに絞って話し合う(一度に全部やろうとしない)
- 171の練習(5分):家族全員が順番に171で伝言を録音・再生してみる
- 次回までの宿題決め(5分):「防災バッグの中身を見直す」「避難所まで歩いてみる」など、1つだけ決める
子どもを飽きさせない工夫
小学生以下の子どもがいる場合、以下の工夫で参加意欲が上がります:
- 「防災クイズ」形式で質問する(「家の一時集合場所はどこ?」「171の番号は?」)
- 防災バッグの中身を一緒に確認し、「これは何に使うもの?」と考えさせる
- スタンプカードを作り、参加するごとにシールを貼る(10回で好きなおやつ、など)
記録を残す
話し合った内容は「防災ノート」に記録しておきます。私はA5サイズのノートに以下を書いています:
- 連絡手段の優先順位(第1〜第4手段)
- 一時集合場所と最終集合場所の住所・目印
- 各人の役割分担表
- 毎月の会議で決めた宿題
このノートを防災バッグに入れておけば、実際の災害時に「何を決めたっけ?」と迷わずに済みます。
よくあるトラブルと対処法
家族で防災計画を立てる際、実際に起こりがちな問題と解決策をまとめます。
トラブル1:家族が話し合いに乗り気でない
症状:「災害なんて起きないから」「忙しいから後で」と家族が防災会議を避ける。
原因:災害のリスクが「自分ごと」になっていない、または話し合いが重い雰囲気で負担に感じる。
対処:
- 地元で過去に起きた災害(台風・地震)の写真や新聞記事を見せて「近所でも起きた」と実感させる
- 「防災会議」という堅苦しい名前をやめ、「家族で171クイズ」など軽いノリで始める
- 最初は5分だけ、1つのテーマだけに絞る(一度に全部やろうとしない)
トラブル2:子どもが集合場所を覚えられない
症状:何度教えても「○○公園ってどこ?」と忘れてしまう。
原因:口頭で説明しただけで、実際に歩いて確認していない。子どもは視覚情報で覚えるほうが得意。
対処:
- 休日に家族で一時集合場所まで歩き、写真を撮る
- 「この赤いポストを曲がる」「この自動販売機のある角」など、目印を一緒に探す
- スマホの地図アプリで「お気に入り」に登録し、オフラインでも見られるようにする(災害時のスマホ活用法も参考)
トラブル3:役割分担が実行できない
症状:「お父さんが火元確認」と決めたのに、平日昼間は父が不在で機能しない。
原因:「誰がいる時」「誰がいない時」のパターン別の計画を立てていない。
対処:
- 「全員在宅時」「平日昼間」「休日外出時」の3パターンで役割分担表を作る
- 「お父さん不在時はお母さんが火元確認も担当」など、代行ルールを明確にする
- 月1回の訓練で、各パターンをローテーションして練習する
トラブル4:避難所が遠すぎて歩けない
症状:指定避難所まで徒歩1時間以上かかり、高齢者や小さい子どもがいる家族では現実的でない。
原因:自治体の指定避難所が地域全体をカバーする設計で、必ずしも各家庭の徒歩圏内にあるとは限らない。
対処:
- 「一時集合場所で2〜3時間様子を見て、在宅避難が可能なら自宅に戻る」というプランBを用意
- 在宅避難に備えて、水・食料・簡易トイレを1週間分備蓄しておく
- 近隣で民間の一時避難施設(コンビニ・ガソリンスタンドなど)が災害協定を結んでいるか自治体に確認
まとめ
防災の日までに家族で決めておくべき3つの重点項目を整理しました:
- 連絡手段は4段階の優先順位で:171→SNS→公衆電話→直接会う、の順。毎月1日に171の練習をして操作に慣れておく
- 集合場所は2段階で決める:自宅近くの一時集合場所(徒歩5〜10分)と、避難所などの最終集合場所。複数ルートを実際に歩いて確認する
- 役割分担は具体的に:発災直後10分・避難時・避難所生活の3段階で「誰が何をするか」を決める。パターン別(全員在宅・平日昼間など)の計画も立てる
まずは今月の1日に、家族で30分だけ時間を取って171の練習から始めてみませんか? 完璧な計画を作ろうとせず、「今月は連絡手段だけ決める」と1つずつ進めることが継続のコツです。災害は予告なくやってきますが、事前に決めたことは家族全員の安心につながります。

