災害が発生したとき、必ずしも避難所へ行く必要があるわけではありません。自宅が安全であれば「在宅避難」という選択肢があります。実際、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、避難所の3密を避けるため在宅避難が推奨されるケースも増えています。しかし、在宅避難には事前の準備が欠かせません。この記事では、避難所に行かずに自宅で数日間を乗り切るための具体的な準備方法をご紹介します。
在宅避難とは?避難所との違いを理解する
在宅避難が可能な条件
在宅避難とは、災害発生後も自宅に留まって生活を続けることです。ただし、すべての状況で選択できるわけではありません。以下の条件を満たしている必要があります。
- 建物に倒壊や火災の危険がない
- 浸水・土砂崩れなどのリスクがない地域
- ライフラインが途絶えても数日間生活できる備えがある
- 家族の健康状態に問題がない
自治体が発令する「避難指示」は、基本的に生命の危険がある場合に出されます。ハザードマップで自宅がどの程度のリスクエリアにあるか、事前に確認しておくことが重要です。私の住む地域では、洪水浸水想定区域外のため、地震や台風時は在宅避難を前提に準備しています。
在宅避難のメリットとデメリット
メリット:
- プライバシーが保たれる
- 感染症のリスクが低い
- ペットと一緒に過ごせる
- 慣れた環境でストレスが少ない
- 備蓄品を自由に使える
デメリット:
- 事前の備蓄が必須(避難所には支援物資が届く)
- 情報収集を自力で行う必要がある
- 孤立するリスク(特に高齢者世帯)
- 建物の安全性を自己判断しなければならない
避難所には自治体からの情報や支援物資が集まりますが、在宅避難では自己責任の範囲が大きくなります。そのため、事前準備の質が生活の質に直結します。
最低限必要な備蓄品リスト
水と食料は7日分が目安
内閣府の防災指針では、最低3日分、できれば1週間分の備蓄が推奨されています。具体的な量は以下の通りです。
水:1人1日3リットル × 家族人数 × 7日分
例:4人家族なら 3L × 4人 × 7日 = 84リットル(2Lペットボトル42本)
食料:常温保存できて調理不要なものを中心に
- アルファ米、レトルトご飯(1人1日3食×7日=21食分)
- 缶詰(ツナ、サバ、フルーツなど)
- レトルト食品(カレー、パスタソースなど)
- 栄養補助食品(カロリーメイト、ゼリー飲料)
- 菓子類(チョコレート、ビスケット)
私の家では、賞味期限が近づいたものから日常で消費し、新しいものを買い足す「ローリングストック」を実践しています。これにより、常に新鮮な備蓄を保つことができます。
意外と見落としがちな生活用品
食料と水だけでは快適な在宅避難はできません。以下の生活用品も準備しておきましょう。
| カテゴリ | 必要なもの | 備考 |
|---|---|---|
| トイレ | 簡易トイレ、凝固剤、黒いゴミ袋 | 1人1日5回×7日=35回分 |
| 衛生用品 | ウェットティッシュ、マスク、消毒液、生理用品 | 水が使えない前提で |
| 照明 | LEDランタン、懐中電灯、予備電池 | 各部屋に1つずつ配置 |
| 暖房・冷房 | カセットコンロ、カイロ、扇子 | 季節に応じて調整 |
| 医薬品 | 常備薬、救急セット、持病の薬 | 処方薬は予備を確保 |
特に簡易トイレは、断水時に最も困るアイテムです。水洗トイレが使えなくなると衛生環境が一気に悪化するため、必ず準備してください。
停電対策:電源確保の方法
ポータブル電源とソーラーパネルの組み合わせ
在宅避難で最も重要なのが電源の確保です。スマートフォンの充電、情報収集、照明、小型冷蔵庫の稼働など、電気がないと現代の生活は成り立ちません。
私が実際に導入しているのは、容量1,000Wh程度のポータブル電源と100Wのソーラーパネルの組み合わせです。これにより以下のような運用が可能になります。
- スマートフォン(10Wh):約100回充電可能
- LEDランタン(5W):約200時間点灯
- ノートパソコン(50Wh):約20回充電
- 小型冷蔵庫(40W):約25時間稼働
ソーラーパネルがあれば、天候次第ですが日中に充電することで、数日間の停電でも電力を確保し続けられます。曇天でも発電量は晴天時の20〜30%程度はあるため、完全に無駄になることはありません。
優先順位をつけた電力使用計画
ポータブル電源の容量は有限です。以下のように優先順位をつけて使用することをおすすめします。
優先度:高
- スマートフォンの充電(情報収集・連絡手段)
- LEDライト(夜間の安全確保)
- ラジオ(電池式も併用)
優先度:中
- 扇風機・電気毛布(季節による)
- 小型冷蔵庫(食品保存)
- モバイルバッテリーの充電
優先度:低
- テレビ(情報収集はスマホ・ラジオで代替可能)
- 娯楽機器
実際の災害時には、想定以上に電力消費が早く感じられます。普段から「この機器は何W使うのか」を把握しておくと、冷静に判断できます。
情報収集と連絡手段の確保
複数の情報源を持つ重要性
在宅避難では、自治体からの避難情報や気象情報を自力で収集する必要があります。以下の手段を複数確保しておきましょう。
- スマートフォン:防災アプリ(Yahoo!防災速報、特務機関NERV防災など)をインストール
- ラジオ:手回し充電式やソーラー充電式のもの
- テレビ:ポータブル電源で稼働可能なワンセグ対応機
- 自治体の防災無線:屋外スピーカーの音が聞こえるか事前確認
- 近隣住民との声かけ:日頃からのコミュニケーション
2019年の台風19号では、私の地域でも長時間停電が発生しました。その際、スマートフォンのバッテリーを温存するため、日中は手回しラジオで情報収集し、夜間のみスマホで詳細を確認する運用が有効でした。
家族との連絡手段を決めておく
災害時は電話回線が混雑し、通話が困難になることがあります。以下の方法を家族で共有しておきましょう。
- LINEなどのメッセージアプリ(音声通話より繋がりやすい)
- 災害用伝言ダイヤル(171)の使い方を練習
- 避難場所や集合場所を事前に決めておく
- 県外の親戚を連絡中継点とする(遠方は比較的繋がりやすい)
特に、家族が離れた場所にいる時間帯(勤務・通学時間)に災害が起きた場合を想定し、「どこで落ち合うか」を決めておくことが重要です。
ペットや高齢者がいる家庭の注意点
ペット同伴の在宅避難
避難所ではペットの受け入れが制限される場合が多く、在宅避難を選ぶ理由の一つになります。ペット用の備蓄も忘れずに準備しましょう。
- ペットフード・水(7日分以上)
- 常備薬・医療用品
- ペットシーツ、トイレ砂
- キャリーケース(避難が必要になった場合)
- 鑑札・迷子札・マイクロチップ情報の確認
ペットは環境変化にストレスを感じやすいため、普段から使っているブランケットやおもちゃも備蓄品に加えると、安心して過ごせます。
高齢者・要配慮者への配慮
高齢者や持病のある家族がいる場合、以下の点に注意が必要です。
- 処方薬は最低2週間分確保(かかりつけ医に相談)
- おくすり手帳のコピーを防災バッグに入れる
- 介護用品(おむつ、流動食など)の備蓄
- 緊急連絡先(かかりつけ医、訪問介護事業者)のリスト作成
- エアマットや簡易ベッド(床に直接寝ると体調を崩しやすい)
また、自治体の「避難行動要支援者名簿」に登録しておくと、災害時に自治体や民生委員からの安否確認が受けられる場合があります。詳細は各自治体の福祉課にお問い合わせください。
在宅避難の訓練とチェックリスト
年に1回は実際に試してみる
備蓄品を揃えただけでは不十分です。年に1回程度、実際に在宅避難を想定した訓練を行いましょう。
訓練のステップ:
- 週末の1日を「在宅避難日」として設定
- 水道・ガス・電気を使わない生活を数時間体験
- 備蓄食料だけで食事を作る
- ポータブル電源だけで夜を過ごす
- 簡易トイレを実際に組み立ててみる
私が実際にやってみたところ、「缶切りがない」「ラジオの電池が切れていた」「子どもがアルファ米を嫌がった」など、多くの問題点が見つかりました。こうした訓練で得た教訓は、実際の災害時に必ず役立ちます。
チェックリストで定期確認
備蓄品は定期的に見直しが必要です。以下のチェックリストを3ヶ月に1回確認しましょう。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 水・食料 | 賞味期限は6ヶ月以上あるか |
| 電池 | 液漏れしていないか、残量は十分か |
| 医薬品 | 使用期限内か、不足はないか |
| ポータブル電源 | 充電状態(50%以上を保つ) |
| 衣類 | 季節に合っているか、サイズは合うか |
| 連絡先リスト | 電話番号に変更はないか |
スマートフォンのリマインダーに登録しておくと、確認忘れを防げます。
まとめ
在宅避難は、事前の準備があれば避難所に行かずに自宅で安全に過ごせる有効な選択肢です。この記事の要点をまとめます。
- 在宅避難は自宅の安全性が確保されている場合に可能:ハザードマップで事前確認し、建物に危険がないことが前提。プライバシーが保たれ、ペットと過ごせるメリットがある
- 最低7日分の備蓄が必要:水は1人1日3リットル、食料は常温保存可能なものを。簡易トイレや衛生用品も必須で、ローリングストックで鮮度を保つ
- 電源確保と情報収集が生命線:ポータブル電源とソーラーパネルで電力を確保し、複数の情報源(スマホ、ラジオ、防災アプリ)で最新情報を入手する
まずは、ご自宅のハザードマップ確認と、1週間分の水・食料の備蓄から始めてみてください。完璧を目指さず、できることから少しずつ準備を進めることが、いざという時の安心につながります。Solar Baseでは、停電対策に役立つポータブル電源の選び方やソーラーパネルの活用法も詳しく解説していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。

